長らく出版不況が続く日本では、出版業界=オワコンのような、かなりネガティブなイメージがありますが、中国の出版関係者と話をすると、業績については今のところ、そこまで深刻ではない印象です。
WeChatPay(微信支付)やAlipay(支付宝)など、決済手段はほぼ電子化され日本の先を行く中国なので、てっきり書籍の電子化もかなり浸透していると思っていたので意外でした。
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出版関連のデータを調べてみると、中国ではむしろネット販売の普及によって書籍小売り市場の規模は拡大しているようです。
・中国出版市場調査(ジェトロ)より
中国の書籍小売り市場は堅調とはいえ、中国人の読書量は年間平均4.66冊と世界的にも低水準なので、まだまだ伸びしろがあるのだと思います。
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書籍好調といえば、たしかに上海などの大都市では日本の蔦屋書店のようなカフェやギャラリーを併設するおしゃれな書店が物凄い勢いで増えており、休日になると多く人々でにぎわっています。
中国人は裕福になって読書家が増えているのは間違いないと思います。
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政府による2018年の出版改革
さて、中国のメディアや出版社はすべて政府による検閲を受けているため「中国には言論の自由がない」とよく言われますが、出版物に関して言えば、市販される書籍はすべて政府機関の審査を受け「書号」と呼ばれる書籍コードを取得しなければなりません。
そんな「書号」が、2018年は大幅に制限されるという情報を出版関係者から聞きました。
「書号」制限で出版できなくなる?!
上の記事によれば、出版業界にとって2018年は史上最も厳しい一年になるだろうと論じています。
まず、中国の出版社間で横行している「書号」の売買が禁止になり、著作権フリーの小説の表紙だけ取り換えて何度も同じ内容の書籍を出版して稼ぐことを防ぐため、「書号」の審査を厳しくし、前年の30~40%にまで削減されるのではないかと予想しています。
表向きは出版業界の健全化と出版物の質の向上をうたっていますが、実際は政府による言論統制の側面も大きいのでしょう。
政治、軍事、宗教、文化大革命などセンシティブな題材についてNGであるのはもちろん、風水やSFなど非科学的な題材もNGとなっているようです。
また、下のような出版禁止になる題材リストなどもSNSで出回っているです。
学園恋愛、校内暴力、非倫理的、反社会的な題材など、かなり詳細にわたってNGリストが出回っており、出版社も作家も、書籍を出版できなければ食べていけなくなるので、おのずと自主規制せざるをえなくなるのでしょう。
まとめ
日本人が中国で出版する機会というのはほとんど無いと思いますが、村上春樹や東野圭吾などの中国語版の小説などは非常に人気があるので、このあたりの日本の出版コンテンツの中国展開にどのような影響を及ぼしそうなのか引続きウォッチしてみたいと思います。