TikTokは中国発祥の動画配信アプリであり、世界中で多くの若者を中心に利用されています。
しかし、TikTokの親会社であるバイトダンス社が中国企業であることから、同社がユーザーの個人情報を中国政府に提供する可能性が強いという安全保障上の懸念が指摘されています。
2023年3月現在、アメリカ議会ではTikTokの利用を全面禁止する法案が提出されており、アメリカ国内におけるTikTokの一般人の利用禁止が現実味を帯びてきました。
実は、TikTokに関する同じようなニュースは2020年にも議論されています。
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この記事はTikTok利用禁止に関する情報をフラットな視点でまとめています。
アメリカのTikTok規制
まずはアメリカのTikTok規制の歴史についておさらいしましょう。
トランプ政権
2020年8月、トランプ政権は、中国企業が所有するTikTokとWeChatの米国内での使用を禁止する大統領令に署名しました。当時のトランプ政権は、TikTokが中国政府によって運営されており、個人情報の収集と中国政府による情報操作の可能性があると主張しています。
バイデン政権
2021年6月、第46代米大統領に就任したバイデン大統領により、TikTokとWeChatに対する大統領令は一旦撤回されました。ただし、TikTokが個人情報を不適切に収集し、中国政府による情報操作の可能性があるという懸念が晴れたわけではありません。
2023年現在
2023年2月、アメリカ議会下院の外交委員会でTikTokの利用を全面禁止する法案が可決され、上院でも3月7日には、民主党と共和党の両党派がTikTok禁止の法案を提出し議論が進んでいます。
FBI長官:TikTokは台湾有事に影響
アメリカ議会の公聴会に出席したFBIのレイ長官は、中国政府がTikTokを利用して数百万人に上るアメリカ人ユーザーのデータを管理することは可能だと述べました。また、台湾有事の際に中国政府がTikTokを使ってアメリカの世論に影響を及ぼす可能性にも言及しました。
TikTokの元従業員が内部告発?
米国上院議員ジョシュ・ホーリーは、匿名のTikTok元従業員の内部告発証言を引用し、TikTokのセキュリティーについて中国人エンジニアがアクセス可能なバックドアが存在するという書簡をイエレン財務長官に宛て送りました。
この書簡によると、TikTokの中国人社員らが米国人のデータにアクセスする制限は無く、中国と米国のデータを簡単に切り替えることができると述べています。また、TikTokのツールAeolusを中国在住のエンジニアが使用していることを目撃したとも述べています。
TikTokに中国向け「バックドア」が存在、内部告発者が証言
政府デバイスではTikTokの使用禁止
ホワイトハウスは2023年2月27日、国家安全保障上の懸念から、連邦政府機関に対し、政府支給の全デバイスからTikTokを削除する30日間の期限を設定しました。
米政府、職員端末からのTikTokアプリ削除期限30日以内を設定
日本のTikTok規制
気になるのは、アメリカのこの動きを受けて、日本も同調してTikTokの利用が規制されるのではないかという点です。
日本政府の見解は・・・
アメリカのTikTok規制について、松野官房長官は記者会見で以下のように語っています。
「海外の動向の把握に努めるとともに、必要に応じて適切な対応を行なっていくことが重要と認識しております」
国民民主党は利用禁止に
国民民主党は3月8日、党所属国会議員や秘書、党職員が業務用端末でTikTokを使用するのを禁止すると発表しました。
玉木雄一郎代表は党会合で以下のように語っています。
「プライバシーとセキュリティーの観点から見過ごせないリスクがある。意識を持って取り組んでいきたい」
なぜTikTokが危険なのか?
なぜTikTokばかりが危険と言われているのでしょうか?
TikTokは、中国企業バイトダンス社が開発し、2016年9月にリリースされた「抖音Douyin」の国際版アプリです。
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中国では2017年に政府による情報収集活動を定めた「国家情報法」が施行され、この法律により、中国国内にあるすべてのインターネット企業は、国家機関からの情報提供に応じなければならなくなりました。
TikTokを運営するバイトダンス社は、中国企業の海外法人であるため、中国政府に対して情報提供を強いられる可能性が指摘されている点が懸念を引き起こしているのです。
日本でもよく使われている中国アプリ
日本でも実は中国製アプリも多く使われています。
原神
「原神」は中国企業「miHoYo」が開発したアクションRPGのゲームアプリです。2020年にリリースされ、中国をはじめとする世界各地で大きな人気を博しており、日本でも多くのファンがいます。
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CapCut
CapCutは、TikTokと同じバイトダンス社が開発した動画編集アプリです。無料でダウンロードでき、ユーザーは様々な効果やフィルター、オーディオトラック、テキストなどを使用して動画をカスタマイズすることができます。
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Zoom
近年、リモートワークの需要が増え、ZOOMはその中でも特に重要なツールとなっています。Zoom本社はアメリカにありますが、創業したのは中国山東省で生まれで、大学卒業後、米国籍を取得したエリック・ユエン氏です。2020年には、中国政府のために天安門事件関連のビデオ会議を検閲し、強制終了させた容疑で、中国在住のZoom元従業員が起訴されています。
アメリカ製アプリも安全ではない
GAFAと呼ばれるアメリカのテクノロジー企業のアプリにも、セキュリティ上の懸念が存在しています。例えば、Facebookには過去に個人情報漏洩の問題がありました。また、Googleには、一部のアプリで不正な広告が表示されるなど、不正行為が報告されたことがあります。
スノーデン問題
スノーデン問題とは、2013年にアメリカ国家安全保障局(NSA)の元技術者であるエドワード・スノーデンが、同局が行っていた大規模な監視活動に関する機密情報を公開し、その合法性に疑問を投げかけた事件です。
スノーデンは、NSAが世界中のインターネット通信や電話通信を監視していることを明らかにし、これによって多くの国民のプライバシーが侵害されていると主張しました。また、NSAが海外の政府や企業の通信をも監視していることも暴露されました。
スノーデンはアメリカ政府によって国家機密法違反の容疑で追われ、ロシアに亡命し、その後も複数の国で身を隠しています。
スノーデン問題は、国家権力とプライバシーの問題を取り上げた国際的な論争の発端となり、インターネット上のプライバシー保護や情報管理に対する議論を促しました。
ケンブリッジアナリティカ事件
ケンブリッジアナリティカ事件は、2018年に起こったイギリスの政治コンサルタント企業ケンブリッジアナリティカが、Facebookの利用者データを収集し、政治キャンペーンに利用したとされる事件です。
この事件では、ケンブリッジアナリティカがFacebookの利用者から収集したデータを分析し、その結果を用いて、アメリカ合衆国の2016年の大統領選挙や、英国のEU離脱国民投票などの政治キャンペーンに関与したとされています。
この事件は、Facebookがユーザーデータの不正使用を許したことに対する批判を引き起こし、プライバシー保護や個人情報の取り扱いに対する議論が巻き起こりました。また、この事件は政治操作や選挙介入などの問題も含んでおり、国際的な議論を呼び起こしました。
この事件により、ケンブリッジアナリティカは破産し、その後、政治コンサルティング業界においても規制強化の動きが進むことになりました。
結論
中国のTikTokの扱いを巡って、米国と中国の対立が再び高まっている件をまとめてみました。
結局のところ、アメリカにしても中国にしてもアプリから情報が抜き取られるリスクはありそうです。
日本は受け身ではなく、メイドインジャパンのソフトウェアを開発すれば、かなりのビジネスチャンスになるはずですが、日本の政府や企業は、ソフトウェア開発に十分なリソースを投入していないため、競争力のあるアプリを開発は難しそうです。
日本がソフトウェア開発において競争力を持つためには、政府や企業が積極的な支援を行い、新しいアイデアや技術を採用することが必要です。そして、日本の強みである高品質や技術力を活かした、独自のソフトウェア製品を開発することが、国内外のビジネスチャンスを拡大する一つの方法になると思います。